現代のスポーツ界やフィットネスシーンにおいて、心肺機能の向上や減量、回復力のアップはアスリートのみならず、一般のトレーニング愛好家にとっても非常に重要なテーマとなっています。
実際に有名アスリートたちも、科学的根拠に基づいた最新の有酸素運動プログラムや筋力トレーニングの併用法を実践しており、その効果は多くの論文でも裏付けられています。
今回は、研究論文をもとに科学的な、具体的なトレーニング方法、注意点、そして食事や生活習慣までを網羅した、実践的なガイドをご紹介します。
この記事のポイント ✅ 筋トレと有酸素運動の組み合わせは、最大筋力や筋肥大には悪影響を与えない → 一般的な「有酸素運動は筋トレの敵」という考えは誤解だった。 ✅ 瞬発力(爆発的筋力)は、有酸素運動と筋トレを同じセッションで行うと低下する可能性がある → スプリンターや格闘技選手は特に注意が必要。 ✅ トレーニングの間隔を「3時間以上空ける」か「別日に分ける」ことで瞬発力の低下を防げる → これにより、持久力とパワーを両立できる。 ✅ 健康やダイエット目的なら、有酸素運動を積極的に取り入れても問題なし → 目的に応じて、有酸素運動の取り入れ方を工夫しよう! |
アスリートにおける有酸素運動のメリット
1. 心肺機能の向上
有酸素運動は、最大酸素摂取量(VO2max)の向上を促し、心臓や肺の機能を強化します。
高強度インターバルトレーニング(HIIT)や中強度の持続運動を取り入れることで、運動中の酸素供給能力が劇的に改善され、長時間の持久力が向上します。
2. 回復力の向上
低強度の有酸素運動は、運動後に蓄積した乳酸の除去を促進し、回復時間を短縮します。
アスリートは、筋力トレーニングや試合後のリカバリープログラムに有酸素運動を組み込むことで、次のトレーニングや試合への準備がスムーズに行えるよう工夫しています。
3. 体脂肪の減少
脂肪燃焼効果に優れた有酸素運動は、体脂肪の減少にも直結します。
中強度で長時間の運動や、空腹時に行う有酸素運動、さらにはケトジェニックダイエットとの併用が、効率的な減量手法として注目されています。
4. 精神的健康の向上
有酸素運動は、ストレス軽減や集中力の向上にも寄与します。
運動中に分泌されるエンドルフィンは、気分を高揚させ、精神面でのサポート効果も期待できるため、試合前のメンタルトレーニングとしても利用されています。
科学的根拠に基づく有酸素運動方法
研究論文をもとに、科学的なアスリートの心肺機能向上や減量に効果的な有酸素運動方法をご紹介します。
1. 高強度インターバルトレーニング(HIIT)
HIITは、最大心拍数の90%以上の強度で短時間運動を行い、その後に休息や低強度運動を挟む方法です。
短時間で効果的にVO2maxを向上させることが多くの論文で示されており、忙しいスケジュールの中でも取り入れやすいトレーニング方法です。
【推奨プログラム】
- 頻度:週1~2回
- 時間:1セッションあたり10~20分
- 内容:全力疾走×30秒、回復ウォーキング×60秒 を繰り返す
2. 持続的な中強度運動
心拍数を最大心拍数の60~70%に保ち、30~60分間継続する運動は、心肺機能の基礎をじっくりと強化します。
長時間のランニングやサイクリング、水泳などがこれに当たります。
【推奨プログラム】
- 頻度:週3~5回
- 時間:1セッションあたり30分~1時間
- メリット:持久力向上と脂肪燃焼の両面で効果を発揮
3. 呼吸筋トレーニングの併用
運動中の酸素供給をさらに効率化するために、呼吸筋を鍛えるトレーニングも取り入れると良いでしょう。
専用のトレーニング器具や呼吸法を用いることで、呼吸筋の強化が期待され、運動パフォーマンスの向上に寄与します。
アスリートの減量を目的とした有酸素運動
体重管理や体脂肪の減少を目指すアスリートにとって、減量とパフォーマンス向上は切っても切れない関係にあります。
以下の方法をうまく組み合わせることで、健康を維持しながら効率的に減量を進めることが可能です。
1. 中強度の長時間運動
心拍数を50~70%に維持しながら45分以上の運動を行うことで、脂肪燃焼を促進します。ジョギングやサイクリング、水泳など、自分に合った運動を選びましょう。
2. 空腹時の有酸素運動
朝食前など、空腹時に低~中強度の有酸素運動を行うと、体内に蓄積された脂肪をエネルギーとして効率的に消費できるとされています。ただし、エネルギー不足によるパフォーマンス低下や体調管理には十分な注意が必要です。
3. ケトジェニックダイエットとの併用
近年、ケトジェニックダイエットと有酸素運動を組み合わせることで、脂肪燃焼が効率的に進むという報告があります。食事内容の見直しと合わせて、専門家の指導の下で行うと良いでしょう。
有酸素運動と筋力トレーニングの同時実施:効果と注意点
1. 有酸素運動の効果
有酸素運動は、前述の通り心肺機能向上、回復促進、体脂肪減少、精神的健康の改善に寄与します。しかし、筋力トレーニングと同時に実施する場合、いくつかの注意点があります。
2. 筋力トレーニングとの「干渉効果」
有酸素運動と筋力トレーニングを同じ日に行うと、相互に影響し合い、特に筋肥大や最大筋力の向上が減少する可能性(インターフェアレンス効果)が指摘されています。
【対策】
- 運動の順序:一般的には、筋力トレーニングを先に行い、その後に低強度の有酸素運動を実施する方法が推奨されます。
- トレーニング強度の調整:両方のトレーニングを高強度で行うと疲労が蓄積しやすいため、各セッションの強度や頻度を適切に設定することが重要です。
- 有酸素運動と、筋力トレーニングの間隔:有酸素運動と筋力トレーニングのあいだに3時間のインターバルをおくと、干渉効果はないとされています。
ドイツ・ケルンスポーツ大学の研究チームの発表によれば、有酸素運動と筋力トレーニングの併用は、
- 最大筋力や筋肥大には悪影響を及ぼさない。
- ただし、爆発的筋力(瞬発力)は低下する可能性があり、特に有酸素運動と筋トレを同じセッションで行うと影響が大きい。
- 爆発的筋力の発達を重視する場合は、有酸素運動と筋トレを3時間以上離して行うのが望ましい。
としています。
研究について、詳しく知りたい方はこちら→
論文解説:筋トレと有酸素運動 同じ日にやると何が起こる? ~瞬発力を伸ばす最適解~
朝に筋トレして、夕方有酸素運動を行うなどの工夫が必要です。
3. 疲労管理と休息の重要性
有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる場合、トレーニング後の休息や栄養補給が非常に大切です。
特に十分な睡眠や水分補給、バランスの取れた食事を心がけることで、トレーニング効果を最大限に引き出すことができます。
アスリート別に見る最適なトレーニングプログラム
1. レベル別プログラムの提案
アスリートの経験や競技レベルに合わせた有酸素運動の取り入れ方も重要です。
初級レベルのアスリート
- 例:週3回程度のジョギング(30分程度)、水泳(1時間程度)、サイクリング(1時間程度)
- ポイント:まずは持久運動を中心に、体力に合わせた低負荷の運動から始め、徐々に運動量や強度を増加させる。
中級レベルのアスリート
- 例:週2回のインターバルトレーニング(20分程度)、週1回の持久走(45分程度)、クロストレーニング(例:水泳やサイクリング)
- ポイント:ある程度の運動経験があるため、心肺機能の向上とともに筋力やスピードも意識したプログラムに挑戦する。
上級レベルのアスリート
- 例:週1回のHIIT(15分程度)、週1回のSIT(10分程度)、週2回の1時間程度の持久走
- ポイント:高強度トレーニングを取り入れ、競技特性に合わせたクロストレーニングを実施することで、全体的なパフォーマンスの向上を図る。
2. 競技種目や年齢による調整
- 競技種目別:持久系競技(マラソン、長距離水泳など)は持久走中心、瞬発系競技(短距離走、球技など)はHIITやインターバルトレーニングが有効。技術系競技の場合は、競技の動きを取り入れたインターバルトレーニングやクロストレーニングを検討。
- 年齢別:若年層は高強度トレーニングにもチャレンジ可能。中年層は運動強度や頻度の調整が必要。高齢層は怪我予防のため、無理のない範囲でウォーミングアップやクールダウンを十分に行うことが重要です。
減量とパフォーマンス向上のための食事と生活習慣
1. 栄養バランスの確保
有酸素運動や筋力トレーニングの効果を最大限に引き出すためには、適切な栄養摂取が不可欠です。
- タンパク質:筋肉の修復・成長に必要。肉、魚、卵、大豆製品などをバランスよく摂取。
- 炭水化物:運動のエネルギー源として、ご飯、パン、麺類など適切な量を。
- 脂質:ホルモン生成や細胞膜の構成に必要なため、ナッツ、オリーブオイル、魚などから良質な脂質を取り入れる。
- ビタミン・ミネラル:野菜や果物、海藻類を摂取し、代謝促進と疲労回復をサポート。
- タウリン:持久力トレーニング中の乳酸値上昇を抑え、脂肪酸化を促進する効果が報告されており、空腹時に6gのタウリン摂取や、1日3回、2gずつの摂取が注目されています。
2. 生活習慣の見直し
- 十分な睡眠:毎日7~8時間の睡眠を確保し、筋肉の修復とホルモンバランスの調整を行いましょう。
- 水分補給:運動中はこまめな水分補給が必要です。脱水を防ぐことでパフォーマンスの低下を防ぎます。
- ストレス管理:リラックスできる時間を作り、精神的な健康維持にも努めましょう。
- ウォーミングアップ・クールダウン:運動前の準備運動と、運動後のクールダウンは、怪我予防と回復促進に欠かせません。
有酸素運動と筋力トレーニングの効果的な併用法
アスリートの中には、有酸素運動と筋力トレーニングの両方を効果的に取り入れたいと考える方も多いはずです。しかし、これらを同時に行う際には以下の点に留意する必要があります。
1. トレーニングの順序とスケジュール調整
- 筋力トレーニングを先に実施:筋肥大や最大筋力向上を狙う場合、先に高負荷の筋力トレーニングを行い、その後に低強度の有酸素運動を行うことで、干渉効果を最小限に抑えることが可能です。
- 運動日の分割:同じ日に両方のトレーニングを実施するのではなく、日を分けることで疲労の蓄積を防ぎ、回復時間を確保しましょう。
2. 強度・頻度・休息のバランス
- トレーニングの強度や頻度は、アスリート個々の体力や目標に合わせて調整が必要です。高強度の有酸素運動と筋力トレーニングを併用する場合、十分な休息日を設けることが不可欠です。
- アクティブレスト(軽い運動)を休息日に取り入れることで、血行促進と疲労回復を図ることができます。
私の場合、週2回の筋トレと、週3回の有酸素トレーニングを行なっています。
月曜日:有酸素運動 最大心拍数の80〜90% 2分 最大心拍数の50〜60% 2分 を20分間 とスキルトレ0ーニング
火曜日:オフ
水曜日:筋トレ(ジムでガッツリ90分)
木曜日:月曜日と同じ
金曜日:オフ
土曜日:月曜日と同じ
日曜日:筋トレ(ジムでガッツリ90分)
心拍数は、スマートウォッチを使用して管理しています。
運動中にリアルタイムで心拍数が表示され、管理しやすくなりました。
心拍数を正確に計測できるので、ありがたい。
使ってるのはこれ。まあまあ正確に計測できます。
正確に測れるのはこれ。お金に余裕が出たら買おう。
もう4年くらいこの生活なので、最近はあまり変化はありません。
始めた当初は、2ヶ月体重変動なく、3ヶ月目から体重が減り始めました。
6ヶ月後には、7kgの減量に成功しました。
まとめ
本記事では、有名アスリートも実践する最新の有酸素運動とトレーニング方法について、科学的根拠に基づく情報をもとに解説してきました。
- 心肺機能の向上、回復促進、体脂肪の減少、そして精神面での健康維持といったメリットは、アスリートにとって必須の要素です。
- HIITや中強度の持続運動、さらには呼吸筋トレーニングを組み合わせることで、効率的な心肺機能向上が実現できます。
- 減量目的の場合、空腹時の有酸素運動やケトジェニックダイエットとの併用が効果的であり、食事や生活習慣の改善が成功の鍵となります。
- 有酸素運動と筋力トレーニングの同時実施には、トレーニングの順序、強度、頻度の調整や十分な休息が不可欠であり、インターフェアレンス効果を最小限に抑えることがポイントです。
- アスリートは、自身のレベルや競技特性、年齢に合わせたトレーニングプログラムを構築することが、パフォーマンス向上と怪我予防に直結します。
これらの知見を活かし、最新のトレーニング法を実践することで、競技パフォーマンスの向上や健康維持を実現し、さらなる高みへと挑戦できるはずです。今後も専門家の意見や最新の研究成果に注目しながら、自分に最適なトレーニングプランを追求していきましょう。
参考論文
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- Strength Training and Aerobic Exercise: Comparison and Contrast. The Journal of Strength and Conditioning Research, 2007-01-01.
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